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「明るさ」よりも「くつろぎの明かり」のある照明計画

2018.08.20

カベトモヒロです。このテーマでの思い出の話になりますが、

谷崎潤一郎「陰翳礼讃」を建築を学び始めた頃、先生から読みなさいと

いわれ、初めて読みました。

それから十数年。クライアントとの照明計画の話の中で「谷崎の陰翳礼讃の味噌汁」

知ってます?この世界観が良いんです。といわれました。

これは自分でも求める部分でもあります。

 

けだし料理の色あいは何処の国でも食器の色や壁の色と調和するように
工夫されているのであろうが、日本料理は明るい所で白ッちゃけた器で
食べては慥(たし)かに食欲が半減する。たとえばわれわれが毎朝たべる
赤味噌の汁なども、あの色を考えると、昔の薄暗い家の中で発達したもので
あることが分る。私は或る茶会に呼ばれて味噌汁を出されたことがあったが、
いつもは何でもなくたべていたあのどろどろの赤土色をした汁が、覚束ない
蝋燭のあかりの下で、黒うるしの椀に澱んでいるのを見ると、実に深みの
ある、うまそうな色をしているのであった。その外醤油などにしても、上方
では刺身や漬物やおひたしには濃い口の「たまり」を使うが、あのねっとりと
したつやのある汁がいかに陰翳に富み、闇と調和することか。また白味噌や、
豆腐や、蒲鉾や、とろゝ汁や、白身の刺し身や、あゝいう白い肌のものも、
周囲を明るくしたのでは色が引き立たない。(中略)かく考えて来ると、
われわれの料理が常に陰翳を基調とし、闇というものと切っても切れない
関係にあることを知るのである。

「陰翳礼讃」 谷崎潤一郎  より抜粋

 

 

昔の日本家屋は軒が深く、光も蝋燭薄暗い。そんな中、茶色い味噌汁は、

鼻を近づければ出汁の香りがし、陰影の中で漆の椀を近づければ違う見え方をする、

 

「明るさ」を最優先させて、照度を優先させた照明器具の計画と、「陰影礼讃の味噌汁」

の話の世界観は真逆にあります。

 

「癒し」や「くつろげる」空間の演出という意味の明かりを提案したいと考えています。

照度を求める公共の空間から、家に帰り、安心して体を休めることができる。

ただし、防犯の明かりや、作業の明かりは大事にしないといけないと思っています。

 

最後に、「くつろぎの明かり」のある空間を、過去の作品でご紹介します。

 

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住宅#1703  撮影 新良太

 

 

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住宅#1703

 

 

渡邊邸_6831

 

住宅#1101  撮影 新良太

 

 

浅川邸_3676

 

住宅#1702  撮影 新良太

 

 

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住宅#1201  撮影 新良太

 

 

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住宅#1201  撮影 新良太

 

 

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住宅#1602  撮影 新良太